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Charming Times No.23

<2023年2月発行 / 23rd Edition>

Charming Times No.23

目次 Index


PDF版をダウンロードしていただけます。

⇒ Charming Times No.23 (PDF)


– 特集 A -

20周年記念事業/アジアフォーラム実施報告

2022年11月23日(祝・水曜日) 15:00-18:00オンライン形式で「移住とHIV アジアフォーラム Asian Forum on HIV and Migration」を開催しました。

ベトナム、台湾、タイ、ミャンマー、インドネシア、韓国、日本で活動している7カ国と地域のNGOのパネリストから

・各国の移住HIV陽性者が継続診療につながるまでのステップ

・各NGOがどのように移住HIV陽性者を支援しているのか

の内容を紹介していただきました。参加者の皆さんからもたくさんの質問をいただき、後半の質疑応答の時間には、パネリストの皆さんからたくさんのお話を伺いました。

移住HIV陽性者が安心して海外生活を送れるように今後もサポートしていきたいと思います。

参加団体紹介 (当日発表順)

Vietnam Network of People living with HIV (VNP+) (ベトナム)

国内においてHIV/AIDS予防の分野で活動している70の自助グループ、同盟、地方ネットワークをまとめる組織。
ベトナムでHIV/AIDSと共に生きる人々のHIV予防活動への参加を増やし、HIV陽性者に関する政策に影響を与える共通の声を作り、地理的な障壁を取り除くことを目標にしている。また、情報や経験を共有することでネットワークメンバーのキャパシティビルディングに努め、差別撤廃、治療へのアクセス増、アドボカシーや政策提言等を目的とした活動を行っている。

ホームページ: https://www.facebook.com/vnpplus/


Persons with HIV/AIDS Rights Advocacy Association of Taiwan (PRAA) (台湾)

台湾で初めてPWA/HIV陽性者によって、PWA/HIV陽性者のために設立された非営利相互自助組織。
当事者とその家族の基本的人権を守ること、偏見や差別をなくすこと、そしてより良い治療と病気の予防を目指し、様々なサポートを提供しているだけでなく、HIV感染者と一般市民、政府政策立案者、医療、公衆衛生等の関連機関との架け橋としての役割も果たしている。
また、第23回世界エイズ会議でも取り上げられた台湾のエイズ犯罪に関しても積極的な取り組みを行っている。

ホームページ: https://praatw.org/


APN+ (タイ)

1994年にアジア太平洋地域のHIV陽性者ネットワークとして設立され、現在では27の国と地域を中心に組織されている。
HIVと共に生きる人々の生活の質の向上と手頃な価格で包括的な治療、ケア、サポートを受けられる環境整備を目指している。
また、地域の代表機関として、ネットワーク強化だけでなく、HIV政策への働きかけ、女性の性と生殖に関する健康と権利についてのイニシアティブ、HIV-HCV重感染のより良い治療に関するアドボカシーなど様々な活動を行っている。

ホームページ: http://www.apnplus.org/


Pyi Gyi Khin (ミャンマー)

国内の女性と子どもたちの基礎教育、健康、社会的・経済的地位の向上のため1997年に設立された組織。
ミャンマーの全ての地域と州において、コミュニティベースのHIVプログラム、MDR-TB*プロジェクト、CSO*や医療システム強化に関するプログラムを実施している。
全ての市民、特に女性と子どもが、自らの権利を享受し、尊厳をもって人間らしい生活を送ることができるよう、人々の能力開発と必要なアドボカシー活動を通じて、地域に貢献している。

*MDR-TB= 多剤耐性結核、CSO=市民社会組織

ホームページ:www.pgkmyanmar.org


Spiritia Foundation (インドネシア)

1995年に設立された非政府機関。質の高いサポートとケアの提供と国内のHIV感染者の人権を守ることを目的とし、地域および国レベルのパートナーと協力して様々な活動を行っている。
近年ではHIV/AIDS予防のための関係機関との連携強化やコミュニティベースのHIVセルフスクリーニング試験、潜在的なHIV症例の発見とART*へのアクセスを目指した各プログラムなどを実施。
サポーター育成のためのトレーニングも積極的に行っている。

*ART=抗HIV療法

ホームページ:https://spiritia.or.id/


Network of HIV/AIDS Human rights Activists (韓国)

NGOの代表者や個人で構成されるコミュニティベースの組織。ホームページ等はないとのことで、韓国で暮らす外国人HIV陽性者にとって情報源となり得る2つの団体をご紹介いただいた。
KNP+は5つの提携自助団体とともにPWHIV*のために活動する組織。カウンセリングや食事会、キャンプなどのケアプログラムだけでなく、韓国疾病管理予防センターなどの研究活動にも参加している。(https://knpplus.org/)
WeFriendsは国内の移住労働者のためのNGO団体。移住労働者の健康の保障及び推進を目的に活動している。(http://www.wefriends.org/)

*PWHIV=HIV陽性者


< 今後の課題 >  津田幸乃 (CHARMスタッフ)

アジア圏とはいえ、各国時差のある中でのオンライン開催でしたが、予定していたパネリスト全員が無事参加してくださいました。逐次通訳で時間が倍かかってしまったり、ネット環境等により音声が聞き取りにくかったりという難点もありましたが、参加者からは各国へのご質問もたくさん頂戴しました。アジア各国のPWHIV事情やHIV陽性者の移住に関して、興味を持っていただくきっかけになったのではないかと思います。

参加者の職業の内訳はグラフの通りです。今回はメーリングリスト等での告知が主でしたが、医療関係者だけでなく、今後は広く一般の方々にも参加いただけるように、広報の方法についても検討していきたいと思います。

また、フォーラム後のアンケートでは、コロナ禍においてHIV陽性者を取り巻く状況がどのように変化したかや、実際にアジア圏に移住したHIV陽性者の様子、さらに各国における医療通訳の活動、現場の課題への取り組み、セクシャリティに関する実情についてもっと知りたいといった声が聞かれました。設立20周年記念事業として開催したアジアフォーラムですが、今後も各国間のネットワーク構築に努め、定期的にこのような場を設けることは非常に意義のあることではないかと強く感じました。


< 参加した感想 >  三田洋子 (CHARMスタッフ)

この国際フォーラムの主旨は、「国境を越えても安心してHIV/AIDSの治療を受けることができ、変わりのない日常生活が送ることができる。」という市民社会の取り組みの一つです。

日本を含む7か国が参加したこのフォーラムにはオンラインで51名の方々が集結し、それぞれ7か国のHIV/AIDS支援代表者の思い、現状をフォーラムで共有することができました。

主旨の理由としては、慢性疾患を持ちながら生きる人が国境を越えて生活する場合に、その国よって制度が異なるために、移住した先での情報が必要にも関わらず可視化されていない現状があります。そのために、苦渋をなめた方々は多かったと思います。

フォーラムのパネリストたちは各国に移住したHIV陽性者が診療に繋がるまでの手順と支援に焦点を当て、英語で発信されました。日本語に通訳するという方法が取られましたので、パネリストの発言を聞くうちに、各国の現状や問題も見えてきました。治療開始とCD4値、政府の医療費支援と自己負担、内服薬に関すること、プライバシーや差別について、外国人の滞在期間と在留資格等など問題も点在していました。今後この問題をどのように整理して可視化していくのでしょう。今後の課題です。

最後に当団体理事長が述べた「このアジアフォーラムが一年後のエイズ学会で実施出来れば」との提言は同感でした。そして今回のフォーラムは成功し、最初の一歩を歩き出したのだと思いました。


– 新企画 ① -

CHARMERの紹介

今回が2回目になるCHARMERの皆さんを紹介するコーナーです。
CHARMERとは日頃からCHARMに関わってくださっている会員、サポーター、当事者、そして事業に関わってくださっている全ての方々の総称です。

次はCHARMERのあなたにもお願いするかも知れません。その際はぜひご協力ください。

● 紹介項目

お名前(フルネーム、イニシャル、ニックネーム など)
(1) CHARMとの出会い
(2) CHARMでしていること
(3) CHARMに関わってよかったこと
(4) 今後どのように関わっていきたいか
(5) 好き、またはおすすめの食べ物/本/その他
(6) CHARMへの思いや、他のCHARMERのみなさんへの一言!


① 宇髙歩(うたかあゆみ) さん

② たまご さん

③ カルガモ さん


① 宇髙歩(うたかあゆみ) さん

(1) 松浦基夫先生からHIV診療や臨床を学ぶうちに榎本さんや青木さんとお近づきになっていました。
(2) SO SO SOのお薬相談、多文化キャンプのボランティア。
(3) 微力ながら役に立てることがあるのだと感じることができました。
(4) 私の経験、知識が役に立つケースがあれば、いつでもどこでもお手伝いします。
(5) 好きなもの:韓国ドラマ、ミッフィー、美味しいものの食べ歩き、阪神タイガース
(6) 忍耐強く、問題意識を持って、必要なサポートをされる姿勢、CHARMスタッフの皆さまのお仕事ぶりにはいつも感嘆しています。患者さんをサポートするにはたくさんの職種・考え方の方が関わったほうが、患者さんの考え方を受け入れられる機会が増えるので理想的だと感じています。情報交換しながら、患者さんの思いを尊重しつつ、それぞれの立ち位置で、時に越境しながら、力を合わせてサポートして参りましょう。


② たまご さん

(1) もう、かれこれ10年ぐらい前、旅行先の北海道で友人の青木事務局長からパンフレットをいただいたのが最初です。
(2) 今年初めて、関東地方で病院や入国管理事務所へ行く必要のある外国の方に同行して、道案内や書類記入のお手伝いをしました。
(3) 日本で暮らす外国籍の方たちの問題について、知らないことがたくさんあると気づいたこと。
(4) 需要があれば、関東地方での病院や役所などへの同行を引き受けたいと思っています。
(5) 映画『荒野に希望の灯をともす』を見たのをきっかけに、アフガニスタンに水路を築いた中村哲医師の本を続けて読んでいます。食べ物はエスニック料理、飲み物はビールが大好きです。
(6) 素晴らしい活動だと思います。是非、末永く続けていただきたいと希望します。同行は始めたばかりです。会話にはやさしい日本語や、通訳アプリを使ったりしていますが、どの程度まで個人的な話をしていいのか、迷う時があります。アドバイスがあれば、お願いいたします!


③ カルガモ さん

(1) 知人に誘われて、研修会に参加したのがきっかけです。
(2) 医療通訳者として、病院や保健所等での対面通訳、ZOOMでのオンライン通訳をしています。
(3) さまざまな出会いの中で、学ばせていただくことが多く、感謝の気持ちでいっぱいです。
(4) HIV・結核治療の勉強、語学のスキル向上など、自己研磨に努め、どのような状況にも対応できるようになりたいです。
(5) 台湾茶にハマっています。豆花や台湾カステラも日本に定着しつつあり、おすすめです。
(6) SDGsでは「だれひとり取り残さない」世界が目標に掲げられていますが、CHARMでは20年前から、このような理念を実践し継続して活動されていることに、とても感銘を受けています。微力ではありますが、人との繋がりを大切にし、活動を続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


– 特集 B -

CHARM設立20周年「私とHIV」

HIV感染症との歩みをふりかえって (第 2 回 / 全 4 回)

CHARM理事長 松浦基夫

1985年 堺病院最初の患者

堺病院の最初のHIV陽性患者は1985年にHIV抗体検査で陽性が判明した血友病患者である。1975年頃に堺病院小児科にて血友病Aと診断され、以後通院中であった。その時の小児科部長は、HIV陽性の結果を両親に電話で伝えた。「本人にHIV陽性を伝えても、治療法がないから伝えない」というのが、当時の多くの血友病専門医の考え方だった。1994年に脳症で入院、半年近くの闘病を経て25歳で死亡した。

1993年 内科でHIV感染症診療が始まる>

1993年、日本で仕事をしていた日系ブラジル人の青年が肺炎で入院した。一般抗生剤は無効、肺野にスリガラス影を認めたためニューモシスティス肺炎が疑われた。HIV抗体検査陽性、ST合剤・ペンタミジンによる治療で肺炎は軽快、本人の希望でブラジルへ帰国した。HIV陽性であることをどの範囲のスタッフに知らせるべきか、採血や点滴は医師がしなければならないのか、食器は使い捨てにしなければならないのか、といった混乱の中で堺病院のHIV感染症診療は始まった。

この時に、通訳を依頼したのが「HIVと人権・情報センター(JHC)」である。JHCは「感染経路を問わず全てのAIDS患者・HIV感染者を支援すること」を謳って1988年に大阪で設立されたNGOである。偶然ブラジル人の看護師がセンターに滞在しており、通訳として2~3回来院していただいた。JHCの事務局長をしておられた五島真理為の夫と面識があったという偶然もあり、迷わずJHCに参加し、活動の柱の一つであった「エイズ電話相談」に加わった。JHCのメンバーを通じて血友病のHIV陽性者を支援する「ケアーズ」のみなさんとも懇意になり、血友病のHIV陽性患者を何人か診療することになった。この頃に「京都エイズスピーカー養成講座」に講師として呼んでいただいたのが、榎本てる子・青木理恵子との出会いだったと記憶している。

1995年 関西HIV臨床カンファレンス

1995年早春、米国NIHの満屋先生(最初の抗HIV薬であるAZTの発見者)の研究室に留学していた同級生の白阪琢磨(エイズ予防財団理事長・元国立病院機構大阪医療センターHIV/AIDS先端医療開発センター長)が、日本でのHIVの臨床をめざして帰国し、「松浦がHIVに取り組んでいるに違いない」と思って連絡をとって来た。東京では既に「東京HIV診療ネットワーク」が設立されており、関西でもHIV感染症の診療に携わる臨床医の交流と情報交換のための組織の必要性を感じていた。

8月、関西医大洛西ニュータウン病院の上田・兵庫医大の日笠・大阪市立総合医療センターの後藤・大阪赤十字病院の有馬・大阪大学第三内科の吉崎に会の設立をよびかけ、「関西HIV臨床カンファレンス」の準備会をもった。奈良医大の古西を加えて8人を幹事として会を設立した。この時の呼びかけ文を紹介する。

「日本におけるHIV感染者数は徐々に増加して累計4000人に近づき、1994年末には非血友病感染者が血友病感染者を上まわったことが報告されました。これまで特に関西では血友病専門医がHIV感染症診療の中心となってきましたが、今後は、血液・免疫・感染症・呼吸器などの専門医を中心にあらゆる分野の臨床医が力を結集して診療にあたっていく必要があるものと考えます。また、他の医療スタッフとの協力の下に、カウンセリングを含むケアの充実も大きな課題です。

感染者に対する偏見が根強く存在する中で、いまだに診療を拒否する病院があることは大きな問題ですが、実際には多くの病院でHIV感染症の診療が行なわれるようになってきました。近畿2府4県において診療経験のある病院は40以上にのぼっていますが、その多くは経験症例数1~5名と極めて少数にとどまっています。HIV感染症の診療にあたる医療機関が増えることはもちろん望ましいのですが、反面、個々の医療機関の中での臨床経験の蓄積ができず、診療レベルの向上に難があることは否めません。また、新しい治療や治験薬に関する情報の入手も困難な実状があります。この点では、都立駒込病院や東大医科研のような中核病院が存在する東京とは対照的といえます。

こういった状況の中で、HIV感染症の診療レベルを向上させ、どの医療機関においても一定以上の医療を提供できる体制を整えることは焦眉の課題であり、そのための組織をつくることは、むしろ必然といえましょう。ここに、HIV感染症の治療に携わる臨床医の交流と情報交換のための組織として、『関西HIV臨床カンファレンス』の設立を提起するものです。」

1995年10月14日、大阪市立総合医療センターで、「HIV感染症における肺病変~カリニ肺炎を中心に~」をテーマに第1回のカンファレンスが行なわれた。35人の臨床医が集まって5つの医療機関から症例が提示され、白熱した議論が行われた。その5日後の10月19日に行われた満屋先生の特別講演会には約70名の参加があり、新聞にも「関西ネットワーク発足 医師らが互いに情報交換」という記事が掲載された。当初は医師のみの組織であったが、その後に薬剤師部会・カウンセラー部会・歯科医師部会・看護師部会が次々と設立され、現在も関西でのHIV診療を牽引する組織となっている。

(次号に続く)

*注:個人の所属、肩書きは当時のものです

※第1回は下記のリンク
↓↓↓ CharmingTimes22号でご覧いただけます。 ↓↓↓
https://www.charmjapan.com/resources/charmingtimes/charming-times-no-22/#ct22C


– CHARM 活動レポート –

●日本エイズ学会学術集会・総会参加報告

第36回日本エイズ学会報告 青木理恵子

今年も「臨床」の立場から診療をする医療従事者、HIVについての研究を積み重ねている「基礎」、そして地域で支援者や当事者による「社会」の3者が参加して第36回エイズ学会が開催されました。浜松アクトシティに直接集まるだけではなく、高度なオンラインアクセスを提供していただき、遠方の方、直接参加の時間がない方も昨年に引き続き参加することができました。

今年の学会の発表の中では、長期療養、高齢化に伴うトピックが多くみられました。「HIV感染者のアドバンス・ケア・プラニング」「多職種連携」「包括的診療」「生活習慣病」「高齢化」これはHIV感染者の年齢が全体として上がっていることによる対応の必要性から生じてくることです。一方、感染予防内服としてツルバダを服薬するPrEPに関する議論もいろいろなところで行われていました。

学会は、自由な討議の場を提供はしていますが、時間が限られているため、発表者は日頃から研究しているものを凝縮して発表するため、よほどそのトピックに精通していない限り何を聞いて良いのか分からず、質疑は限られた人たちが行うということになってしまいます。特に感染予防に薬を利用するというPrEPの是非については、どの会場に行っても何となくみんなすっきりとしていない、なのに議論にまで至る時間がないままことが進んでいるように感じられます。厚生労働省は認可に向けた決定をしています。何を急いでいるのでしょうか?

今年の学会の中では、「社会」はその存在感が希薄でした。NGOブースは細長い建物の奥に位置していたため多くの人たちが立ち寄ることがなかったのは残念です。

学会のプログラムとして定着したメモリアルサービスは、HIV感染症で亡くなった方、HIVに研究や臨床そして支援に取り組まれた方を覚えて改めて自分たちが今活動できることの意味を考える機会です。今年は、HIV当事者として本名を公開して積極的な啓発活動を牽引してきた長谷川博史さんを偲んでジャンジさんがドラッグクイーンの姿でメッセージを伝えました。この時間だけは頭ではなく皆が心を響き合わせる、学会というこの場と虹の彼方の世界をつなぐ機会です。

今年の会議は、関西圏である京都駅前で2023年12月3日〜5日に開催されます。
関西らしい取り組みを伝えられる場として、今起きている課題を議論できる場として、学会を準備していきたいと思います。

公式サイト: https://www.c-linkage.co.jp/aids37/


第36回日本エイズ学会視聴参加して 三田洋子(CHARMスタッフ)

第36回エイズ学術集会・総会は、静岡県浜松にて行われました。「resistance」(抵抗する、抵抗力がある)が基盤にあり、「HIV の薬剤耐性との闘い」と「HIV 陽性者への差別との闘い」の二つの闘いがテーマでした。案内ポスターは遠州灘の荒波と闘いを表した騎馬武者の墨絵となっており、薬剤耐性や差別という荒波を踏み越えてHIV感染症と戦う姿はポスターを破ってこの現代にでてきそうな勢いでした。

総会内容は臨床、基礎、社会、加えてコロナ・COVID-19が足された4つの骨組みとなっており、ご存じの通りエイズ学会の良さは他の学会と違い、陽性者の方々が実際に参加して、共に声を上げることができるところです。

学会に参加し、個人的なベスト3を上げてみます。

1.シンポジュウム「無くならない感染症への偏見・差別〜ハンセン病、HIV、新型コロナウイルスと、教訓はなぜ生かされなかったか〜」ハンセン病の新薬が開発できたのは飛鳥時代から700年が経過した後、HIVの新薬は4年後、新型コロナの新薬は1年でワクチンが開発されました。この差は大きく、人は治療薬が開発されることで差別、偏見が希薄となります。そのため常に新しく、正しい情報を広める必要があるというものでした。見えない道徳的側面は、科学的根拠による事実で薄まるのだと捉えると共に新たな答えが見えた気がしました。

2.「HIV感染者のアドバンス・ケア・プランニング」では、がんと診断された余命数か月の陽性者とパートナーに関わった病院看護師と訪問看護師の終末期連携支援の発表でした。病院看護師は在宅を選んだご本人とパートナーの思いを実現へ繋ぐため、訪問看護師へバトンを渡し、訪問看護師は実際に在宅で看取りに向き合う支援の在り方でした。発表後の質問で「死後の納骨、遺品整理についてはご本人と決めていましたか?」の問いには、終末期支援は患者の死後までの関りと理解しました。今後、在宅での終末期を希望する方々のイメージに繋がったと思いました。

3.「療養支援セクシャルマイノリティの心理的背景と心理・社会的支援」のワークショップ「コミニュティセンターNGO」の発表では、性風俗で働いている方々のSTD情報に目を向けて調査された内容でした。性風俗で働いている人達がPrEPのことを知らない、U=Uを知らないという現状でした。HIV/AIDS の正しい情報が一般社会に届かないことと同じ状態と思いました。公衆衛生的に公的な立場の方々の働きかけが今後充実することを希望します。
そして、エイズ治療は速いスピードで進んでいることを感じました。ケアカスケードは 90-90-90 が 95-95-95 へと変化します。PrEP、筋肉注射、内服薬等、治療方法は毎年目まぐるしく進化しています。このスピードの中に取り残されることなく、流されることの無いように、そして着実に社会に正しいHIV/AIDSの知識が広まり、偏見、差別が無くなることを強く願いたいと思いました。


– HIVと人々 –

創設期のCHARM

武田丈 (CHARM副理事長)

もう20年も前なので記憶もあやふやなのですが、CHARMにかかわるようになったのは、横田恵子さん(当時、大阪府立大学教員)から声をかけられたのがきっかけでした。
当時、日本のHIV陽性者の中での外国籍の人の割合が高かったので、感染リスクのある外国人が母語で安心して抗体検査や陽性判定後のカウンセリングを受けられる団体を立ち上げるということで、紹介されたのが榎本てるちゃんと青木さんだったように思います。
関西学院大学の教員になりたての私は、団体の立上げに参加できると少しわくわくしたのを覚えています。それに、なんといってもてるちゃんパワーで、巻き込まれていったというのもありましたし。

私の専門は多文化ソーシャルワークでHIV/エイズに関する専門知識は全くなかったので、創設期のCHARMに私が貢献できたのは、CHARMという団体を知ってもらい会員になってサポートしてくださる人を募集するために、3つ折りのパンフレットを作成したことぐらいでしょうか。
黄色い地球にCHARMという文字が入った表紙だったように記憶していますが、残念ながら手元にデータが残っていません。これを印刷して周りのいろんな方に配布して、関学の教員を含む何人かの知り合いに会員となってもらいました。

また受託事業でHIV検査を行うということになり、検査会場探しを青木さんとやったこともあります。フィリピン領事館の方に大阪ビジネスパークのビルを紹介されたけど、結局は断られてしまいました。
もう一つCHARMの創設期で私が少しだけお役にたてたのが、野角さんという関学社会学部社会福祉学科生の実習先に紹介したことです。創設期の人手がなく、いろんなことが手探りの状況の中で、医療福祉に関心のあった野角さんが1年間だけでしたがいろいろと活躍してくれました。

立ち上げ時のCHARMの事務所は生野区聖和共働福祉会内にあったのですが、すぐに大阪市北区浪花町の小奇麗なマンションの一室に移ったと記憶しています。
でも手狭だったので、2006年に現在の菅栄町の一軒家に引っ越して現在に至ります。現在の事務所に移った頃の思い出としては、2008年に私が学内で移籍した人間福祉学部社会起業学科生たちと参加させてもらった移住女性の就労支援プロムラムがあります。
アジア人の女性たちが毎週のグループワークの際に持ってくる各国の料理の美味しさから、やがて学生たちと一緒にイベントへの屋台出店、週一の間借りのカフェなどを経て、現在神戸の南京町にあるアジアン食堂バルSALA*へと発展していきました。CHARMの理念は、組織外にも脈々と今も拡がっています。

*SALA:https://kobe-sala.asia/


– 新企画 ② -

ちょう個人的!すきやねん大阪

(特別バージョン) おおさかもん  福嶋眞一

お久しぶりです。

皆さまお元気ですか?久々のおおさかもんです。今回紹介するのは、はり重の牛肉のつくだ煮です。

はり重は、ご存じのように大阪を代表する肉の店です。この店では、黒毛和牛のめす牛を使っています。ここでの代表格は、牛肉の味噌漬けですが値段が張るので、私はもっぱら牛肉の佃煮にしています。あったかい白飯に合わせるのがベストです。適当な生姜としょう油味がしてもうたまりません。口の中で牛肉の繊維がほろっと解けます。普通は牛肉のつくだ煮と言えば、肉の形が残っているものがほとんどですが、この店のはもっと煮込んでいるというか肉の形はほとんど残っていません。そぼろ状になっています。私はつくだ煮というのであれば、そぼろ状になっていなくてはと思っています。これで、1000円の安さです。未開封で製造日より120日間日持ちします。

本店は、道頓堀の松竹座の横にあります。純和風の建物で、木造3階建てです。定休日は、毎週火曜日です。店の2階、3階ではすき焼きが食べられます。2度ほど行きましたが、関西風の肉を焼き、しょう油と砂糖を入れるのではなく、割り下を使うようです。

本店にはレストランも併設されています。ここのビーフカレーも絶品です。この店のビーフカツは、揚げるのではなくフライパンに少しの油を入れて焼くといった感じになります。ちなみに私はいつもビーフカツとアスパラのサラダをいただいております。

道頓堀という繁華街にあってそこだけ時が止まっているようになっている所がはり重本店です。


– NETWORK -

インタビュー:三井哲次さん (京都ワイズメンズクラブ)

CHARMと関わりのある個人/団体・組織について紹介する当コーナー。今回は多文化キャンプで大変お世話になっている京都ワイズメンズクラブの「PONさん」こと三井哲次さんにお話をうかがいました。

●京都ワイズメンズクラブについて教えてください。

ワイズメンズクラブは元々YMCAを支援するためのクラブです。YMCAを通して地域を支援します。互いに切磋琢磨する中で勉強しています。例会は月1〜2回コミュニケーションをとりながら色々な事業をします。

●CHARMの多文化キャンプでのご支援について教えてください。

(質問) CHARMの多文化キャンプの会場となっている京都YMCAリトリートセンターとのつながりはいつからですか?

あそこは茶畑だったところをYMCAの会員が自分たちで耕し、整備して作ったという歴史があります。会員が使っていましたが、予備校経営が盛んになった頃からリトリートセンターは必要とされなくなり、寂れていきました。
30年前、ワイズメンズクラブの会長の時リトリートセンターの管理人さんからお話を伺い、非常に熱意を感じました。
それでYMCAとしては休眠状態だったセンターをワイズメンズクラブ独自で再興し始めました。そのうちにみんながリトリートセンターの存在に改めて気づき始めました。

(質問) 多文化キャンプを2007年から2019年までの12回利用させていただきましたが、協力を始めたきっかけはなんですか?

2007年頃に世界YMCA/YWCAが国際規模の課題としてHIV/AIDSに取り組むこととなり、その講演会に榎本てる子さんを呼んでともに学びました。その後の講座では青木さんと白野さんがいらっしゃいましたね。
その時に「私たちに何ができますか?」の問いに対して、榎本さんが「キャンプをしたい」と答えがありました。すぐその場でワイズメンズの方々が話をされて、琵琶湖畔かリトリートセンターかという話になり、その日のうちにリトリートセンターでのキャンプが決まり、最終的にYMCAも巻き込んでYMCAの考え方で協力が始まりました。

(質問) 多文化キャンプに際し、具体的には何をしてくださいましたか?

宿泊されるにあたって、参加者の皆で集まってゆっくり話をする機会をなるべくたくさん取ってほしいと思いました。それを目的に食事を提供し、参加者には夕食ぐらいは何も準備せずに食事だけし、片付けも何もせずにすぐにプログラムに戻れるようにサポートしました。
私たちは美味しいものを作るのが好きだし、ただそれをしただけです。(多文化キャンプの)他にも留学生プログラムもありましたので慣れています。ただ自分たちも楽しめるのが大事です。

(質問) どんな食事を提供されましたか?

メンバーがコストコでお肉の塊を買ってきて、それで分厚いステーキを焼いたり、鮭のチャンチャン焼きが得意な方もいました。
参加者の皆さんが「美味しい」と言ってくれることが楽しいです。人間は達成感が一番楽しみを感じると思います。楽しいのではなく、何かをやり遂げることを楽しむんです。

楽しい時間を提供することで、自分たちも楽しむ。

三井さん(左下)とリモートインタビューの様子

(質問) サポートする中で大切にされていることとはなんですか?

チームで問題になるのは「交流したがる」というのが多いことです。何のためにやっているのかが大事です。この場合、余計なことをしないで、交流は必要ありません。
京都ワイズメンズクラブのメンバーの構成はばらばらですが、どちらかというと自営業が多く、多文化キャンプの食事提供にはいつも10人ぐらいのメンバーが参加しています。
ちゃんとサポートの目的を理解している人が3人いれば、後の人たちを引っ張ることができます。残りは気づかないで、ハマっていけます(笑)。

(質問) 多文化キャンプの印象・感想を教えてください。

特に何かということはないですが、食事の時、皆さんが明るかったです。楽しそうにお話をされていましたね。
僕はあまり交流しないで、ひたすら料理をしていました。

●ご自身が京都ワイズメンズクラブに関わったきっかけを教えてください。

26歳の時、YMCAに社交ダンスを習いに行ったのが始めでした。30歳過ぎに自分の結婚式の司会を先輩にお願いしたところ、ワイズメンズクラブに入会したら司会をしてあげると言われまして(笑)。それで入会してダンス以外の活動にも関わるようになりました。

40歳代には国際ボランティアのチームを指導したこともあります。ワイズメンズクラブがYMCAの1チームとして関わるのはその当時初めてのことでした。若者が育っていって、海外の子も含め今でも連絡があります。
リーダー名は「たぬき」ですから「PON」になりました。今でも彼らにとって僕はPONなんです。現在YMCAの理事をしていますが、リーダーが気安くPONって呼ぶものだから総主事がびっくりしていました。
30年間活動していますが、長いようで短かったですね。会長は一年交代ですが、会長もしました。

●活動される中で、モチベーションになっているものや大切にされていることはなんですか?

モチベーションとかの特別なものはなく、元々クリスチャンということもありますし、そんなに真面目な理由はありません。牧師に教会には来なくていいから活動してくださいと言われたこともあります(笑)。

大切にしていることは、相手の団体を尊重することです。
例えば、ある視覚障がいの方が交差点に立っていると渡らせてくれる人がいる。親切にされたら断れない。立っているとまた誰かが渡らせてくれる。で、方向がわからなくなってしまった。食卓の塩を取ってほしい時は、見えないので塩を取ることだけ手伝ってほしい。できないことだけ助けてもらえればいい。親切の押し売りには気をつけないといけない。断れない立場の人もいますので、自己満足で終わらないように彼らが求めることで、自分たちができることをすればいい。

会報「ブリテン」2023年1月号

京都ワイズメンズクラブのホームページで会報「ブリテン」が見られます。
http://www.kyotoys.com/


三井さん、インタビューのお時間、ありがとうございました。活動、特にボランティアで活動をするにあたり、基本になる大切なことをたくさん教えていただきました。今後もCHARMと繋がっていただけましたら嬉しいです。

(聞き手:青木、ポップ  記録:前田)


– 事務局から -

20周年募金のご案内/編集後記

●20周年募金のご案内

CHARM設立20周年記念募金「つなぐ・まもる・つむぐ募金」 2年目のお願い

 ※ 目標額 2,000,000円 (2022年度~2023年度の2年間)
   現在   726,000円 (2022年12月末現在)  募金者数 48人

日本において、外国人のための医療体制、保健社会福祉制度はまだまだ途上にあります。CHARMはこれらのさらなる充実を社会に働きかけるため、2022年度2023年度の2ヶ年をかけて記念事業を計画しています。すでに2022年11月にアジアフォーラムを開催することができました。
その費用に20周年記念募金が用いられました。今後も事業を準備実施することで、その成果を社会に伝え変革の一助となることを願っています。
すでに多くの方々にご協力をいただいています。ありがとうございます。さらなる働きかけをお願いいたします。
詳しくはHPまで。 www.charmjapan.com/2022/07/charm20annivfund/


●編集後記

編集作業の中、本文からいくつかキーワードになる言葉がありました。それをつなげると「人とのつながり」「ネットワーク構築」「情報交換」「自分たちが今できること」「相手(患者)を尊重し」「誰も取り残されることなく」という実現していきたい社会像が出てきました。これまでのCHARMの20年を振り返りつつ、「誰もが健康(すこやか)に暮らせる社会」の実現に向けて、今後やるべきことを考えていく必要があると思いました。ヒントになるような内容を出せるように本機関紙「CharmingTimes」、ホームページなどを通じて今後も発信していきたいと思います。(P)


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*CHARMER(チャーマー):会員をはじめ、事業メンバー、プログラムスタッフ、ボランティアなど、CHARMで活動に関わっているすべての人の総称です。

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